(書評)ルポ風営法改正~踊れる国のつくりかた~

公開日: : おすすめ本

風俗営業法の改正案が可決

2015年6月17日、ダンスクラブの摘発強化から始まった風営法改正を求める運動が実った事がニュースでも大々的に取り上げられ話題になりました。

キャバクラなどの社交飲食店は従来通り風営法に規制されるのですが、日本のナイトライフを健全に成長させていく流れに注目しています。

その運動を追った朝日新聞記者、神庭亮介氏の『ルポ風営法改正』を読んだので、風営法に規制されるキャバクラ事業者としての視点も含めてレビューを書きました。

著者:神庭亮介

1983年生まれの現在32歳(2015年9月28日)。

ネット関連、マンガ、サブカルチャー、映画などが関心領域で、2015年からはデジタル編集部で記事の編集や執筆を担当。

本の内容

第一章 クラブじゃ踊れない!?

著者が実際に目撃した警察によるクラブ摘発劇の一部始終から始まり、「なぜ踊っちゃダメなんだ?」という自然な疑問が大きな集まって、風営法改正を求める運動にまでなっていく経緯が紹介されています。

第二章 風営法の歴史

1948年、売淫と賭博をターゲットとして「接待をして遊興又は飲食をさせる店」「ダンスをさせる店」「射幸心をあおる遊戯をさせる店」を規制対象とする風俗営業取締法が制定。

江戸時代から性的な色の濃かった盆踊りが、明治時代になって「盆踊り禁止令」として規制されるようになったことも紹介されています。

第三章 規制当局の論理

「なぜカラオケは良くてクラブはダメなのか?」「盆踊りはOKなのか?」などの身近な疑問を切り口に、警察庁保安課理事官にインタビュー形式で「規制当局の論理」を聞いて紹介しています。

第四章 海外のクラブ事情

ダンスの規制は日本だけでなく世界各国で行われていることから、「ダンス規制というもののある種の普遍性」を考察しています。

第五章 NOON裁判

大阪の老舗クラブNOONの経営者金光正年さんの無罪を求める裁判の様子が克明に描かれています。

摘発当時の様子を再現するために、お客さんだった証人の女性が裁判所で踊りを実演するというシュールな感じだったそうです。

検察官 「店内で何をしていましたか」
客A  「お酒を飲んだり、音楽に合わせて踊ったりしていました」
検察官 「どんな動きでしたか」
客A  「ジャンプしたり、左右に移動したり」
検察官 「動いているのは足ですか」
客A  「足ですね」
検察官 「足の動きはどのようなものでしたか」
客A  「右足を右に一歩動かしたら、それに合わせて左足も右に動かして…」
検察官 「いわゆるステップですか」
客A  「はい」
検察官 「腕はどういう動きでしたか」
客A  「(少し笑って)右手を右に動かしたら、左ても合わせて動かす、という感じです」
検察官 「手首、肩、ひじのどこを基点にして動かすのですか」
客A  「ひじを基点に」
検察官 「ひじを曲げる?」
客A  「曲げています」
検察官 「ジャンプとはどういうジャンプですか」
客A  「その場で少し上に跳びました」

弁護人 「腰をひねって踊っていた人もいたそうですが、差し支えなければ実演してもらえませんか」
客A  「イヤです」

第六章 加速する改正論議

「なぜ踊ってはいけないのか」というWHYの運動から、「どうやって変えていくのか」というHOWの運動へと展開していく様子が紹介されています。

第七章 踊れる国へ

風営法改正を勝ち取った要因と、まだまだ問題を残しながらも、風営法が改正されたことを通して「社会は変えられる」という実感に意味があるとして締めくくっています。

考えるべきポイント

踊るクラブと業態は異なりますが、ナイトライフに関わる者としてこの本から色々なことを考えさせられました。

法律の本当の目的

踊ることや会話で接客すること自体が悪なんてことは絶対に無いでしょう。ではなんのためにダンスやキャバクラが規制されているのでしょうか。

まえがきき部分に

仮に犯罪が起きたとしても、刑法や麻薬取締法、覚せい剤取締法などの個別法規で対応すれば済む話だ。騒音が迷惑なら、騒音規制法や各自治体の規制条例もある。風営法によるダンス営業規制という形で、種々の弊害を包括的に取り締まることには、やはり違和感が残る。

と言及があったところで10回くらいうなずきました。

「何かとトラブルが多いからひっくるめて規制しておこう」というのは、事業者や消費者から見ても納得しづらいものです。

地域住民との関係

自由に関する国民の権利には「公共の福祉に反しない限り」という条件が付きます。

文中でもクラブの騒音や酔った客同士のトラブルなどの長年悩まされていた近隣住民の方の話が紹介されていました。

地域で自由に商売をする以上、その地域の方々に迷惑をかけず、むしろ好意的に受け取ってもらえるような姿勢や取り組みをするべきです。

キャバクラでもぼったくりをしたり、路上に出てしつこくつきまとうようなキャッチ行為をし、タバコを道路にポイポイ捨てたりするような輩がいますが、そんなことしていては摘発ても「ざまぁみろ」と思われるだけです。

キャバクラであっても「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三方よしが大切です。

性をどう捉えるか

風営法でダンスは「男女間の享楽的な雰囲気が助長されることで、善良の風俗と清浄な風俗環境が害されるおそれがある」として規制対象になっていましたが、享楽的・性的であることはいけないことなのでしょうか。

「どんなダンスにも性を感じさせる部分はある。セクシャルな部分も含めて人間の面白味だし、美しさだと思います」というダンサーの話が紹介されていましたが、その通りだと思います。

キャバクラは「女性であることを売りものにしている」として非難されることがありますが、女性の持つ特有の柔らかさや気遣いに癒される男性は多いです。

会議なんかでも男ばかりでするのと、女性が一人でも入っているのとでは雰囲気がかなり違うはずです。

その「効用」をビジネスに活用することが悪であるとは考えにくいです。

人身売買の防止やや青少年の保護は絶対に必要ですが、それは個別の法規制で対処すべき事柄だと思います。

産業としてのナイトライフ

東京オリンピックに向けて海外からの観光客によるインバウンド消費が期待されていますが、ナイトライフもその例外ではありません。

特に言語の壁をとっぱらう力があるダンスクラブは外国人観光客にとっても魅力的な観光スポットでしょう。

世界遺産なんかも観光スポットとして魅力的ですが、やはり「酒と異性」というところに多くのお金は落ちるので、成長戦略として安全で充実したナイトライフを用意することも重要だと思います。

まとめ

夜の業界にはお昼の一般企業よりも「悪い人」の比率が高いのは否めません。

パチンコ業界も昔は「パンチパーマのヤバそうな兄ちゃん」ばっかりでしたが、今では大々的に新卒採用をし、ホールには親切で丁寧なスタッフさんが笑顔で接客してくれるような業界になりました。

だから夜の業界も権利を主張するだけでなく、非難の声にも真摯に向き合って人に迷惑をかけない業界を目指していく必要があると感じました。

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