欲望について。『生き方~人間として一番大切なこと~』

公開日: : 最終更新日:2015/04/08 おすすめ本

京セラ創業者稲盛和夫さんの『生き方~人間として一番大切なこと~』を読んでいて、おもわず「なるほど・・・」と唸ってしまう仏教説話を見つけました。

以下引用~~~~~~~~~~~

秋も深まったある日、木枯らしの吹く寒々とした景色の中を旅人が家路を急いでいます。
ふと見ると、足元に白いものがいっぱい落ちている。
よく見ればそれは人間の骨です。

「なぜ、こんなところに人の骨が・・・」

と気味悪く、不思議にも思いながら先へ進んでいくと、向こうから一頭の大きな虎が吠えながら迫ってきます。
旅人はびっくり仰天し、

「なるほど、この骨はあの虎に食われた哀れな連中のなれの果てか」

と思いながら、急いでいびすを返して、今来た道を一目散に逃げていきます。

しかし、どう道を迷ったものか断崖絶壁につき当たってしますう。
崖下は怒涛渦巻く海。
後ろからは虎。
進退窮まって、旅人は崖っぷちに一本だけ生えていた松の木によじ登ります。
しかし虎もまた恐ろしく大きな爪を立てて松の木を登り始めている。

今度こそ終わりかと観念しかけましたが、目の前から一本の藤づるが下がっているのを見つけ、旅人は藤づるをつたって下へ降りて行きました。
しかし、つるは途中で途切れており、旅人は宙ぶらりんの状態になってしまいます。

上方では虎が舌舐めずりしながらにらんでいる。
しかも下をよく見ると、荒れ狂う海には赤、黒、青の三匹の竜が、いまにも落ちてきそうな人間を食べてやろうと待ち構えています。

さらには上の方からガリガリと音がするので、目を上げると、藤づるの根もとを白と黒のネズミが交互にかじっている。
そのままでは、つるはネズミの歯に噛み切られて、旅人は口を開けている竜めがけてまっさかさまに落下するほかありません。
まさに八方塞がりの中で、旅人はなんとかネズミを追い払うべく、つるをゆすってみました。
すると何か生ぬるいものが頬に落ちてくる。
なめてみると甘い蜂蜜です。
つるの根もとのほうに蜂の巣があり、揺さぶるたびに蜜がしたたり落ちてくるのです。

旅人はその甘露のような蜜の味のとりこになってしまいました。
それで、今自分が置かれている絶体絶命の状況も忘れて、何度も何度もその命綱を自ら揺すっては、うっとりと甘い蜜を味わう事を繰り返したのです。

これが欲にとらわれた人間の実相であるとお釈迦様は説いておられます。
それほどせっぱつまった危機的な状況に追い込まれてもなお、甘い汁をなめずにはいられない。
それが私たち人間のどうしようもない性であると述べておられるのです。

ロシアの文豪トルストイがこの話を知って、「これほど人間(の欲深さ)を上手く表現した話は無い」と驚き、感心したと言われています。

ちなみに、虎は死や病気を表しています。
松の木はこの世での地位や財産や名誉を表し、白と黒のネズミは昼と夜、すなわち時間の経過を表しています。
絶えず死の恐怖に脅かされ、追われながらも、生にすがろうとする。
しかし、それは一本の藤づるほどに頼りないものでしかない。

そのつるも時間とともに摩滅していき、私たちは年々歳々、逃げてきたはずの死に近づいていくのですが、それでも自分の寿命、生命を縮めてでも「蜜」を欲しがる。そんなあさましいほどの欲望とと一時も縁の切れない存在。
それが人間の偽りない実相だとお釈迦様は教えている訳です。

引用終わり~~~~~~~~~~~

「うーん、なるほど」

また日航の話を出しますが、会社が危機的状況に追い込まれていると分かっていても「甘い汁」をなめずには居られなかったという事でしょうか。
これまではあまり会社の創業者や成功者の書いた「自伝」とか「成功哲学」めいた本は読まず、どちらかと言うとドラッカーやポーターなどの学者の書いた本を好んでいましたが、最近はちょっと変わってきました。

やはり、1代で大企業を創り上げたような方は、学ぶべき普遍的な哲学をも創り上げている。
生きる事、働く事は哲学を創り上げていく事だと気付かされます。

生き方~人間として一番大切なこと~

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